ASAHI RUBBER STORY

the
PHANTOM

7:00

俺の名はファントム。

ゴムのような体をもった以外はごく普通の会社員。

そして人生を楽しむために些細なことにもこだわりを持つ男。

特に自分の特異体質のせいもあってか、ゴムのようなものには人並み以上の知識とこだわりを持っている。

いつもの朝、
いつものルーティンをこなす。

目玉焼きを乗せたトーストにサラダとコーヒー。
これが俺のお気に入りの朝食。

ふとテレビに目をやると、
7:25になっていた。

そろそろ出かけなければ。

残りのトーストを口へ押し込み、コーヒーで流し込むと俺は席を立った。

今日は健康診断にいかなければならない。

7:35

愛車に乗りこみエンジンをかけ走り出す。
大通りへ出たところでパワーウィンドウを操作し窓を開けて朝の空気を取り入れる。

スイッチの操作感が心地いい。

トンネルに差し掛かると自動でヘッドライトが点灯し、インパネにも明かりが灯る。

ヘッドライトもインパネも均一でバラツキのない美しい発光だ。

見た目もさることながら、細かい操作感や配光の美しさなど細かい部分の完成度に惚れてこの車を買った。

ぱっと見はわからないが、ここには朝日ラバーが使われている。

10:00

病院に到着した。

受付を済ませ周囲の様子を観察していると目の前を点滴をつけた患者が通り過ぎた。

おや、この点滴の栓よく見ると・・・

栓に夢中になっていると、
採血のアナウンスが流れた。

看護師が手際よく管を取り替えながら採血を済ませていく。

採血菅のゴム栓にもつい目がいってしまう。

そうか・・・

これも、さっきのあれも、朝日ラバーか。

14:35

健康診断を終えた俺は、海岸線沿いの休憩所に寄り、少し遅めの昼食をとりながら景色を眺めていた。

辺りを見ていると小高い丘のあたりに大きなプロペラのついた白い柱がいくつも立ち並び、くるくる回っている。

自然エネルギーを利用した風力発電か。

その瞬間、風車から目が離せなくなってしまった。

ここからでは、何がどうなっているのかよくわからないが、
目が離せなくってしまっているということは・・・

まさか・・・

あれも朝日ラバーなのか。

18:00

今日の予定をこなし、家路に着く途中、
クリーニングに出していたジャケットを取りに行く。

仕上げもさることながら最新設備がウリのクリーニング屋だ。

スマートフォンでアプリを起動すると俺のジャケットにつけられたタグが光る。

これで受け取り完了。

このスマートさも利用している理由のひとつだ。

・・・

ん?

なんだって?

もう言わなくてもいいだって?

言わせてくれよ。

これも朝日ラバーだよ。

23:00

明日もあることだしそろそろ寝るとしよう。

人生を楽しむためには睡眠の質にもこだわる男。
それがこの俺、ファントム。

眠りにつこうとすると突然、目の前の空間が歪み出した。

そこに吸い込まれていくような感覚に囚われた。

いったい何が・・・

・・・

・・・

うわっ!

         

・・・

・・・

・・・

99:99 - 2030

気がつくと俺は見知らぬ場所に佇んでいた。

ここはどこだ?

手元にあったスマホを見るとそこには2030年と表示されていた。

タイムスリップしたのか?

それとも夢を見ているのか?

あたりを見回してみると不思議な光景が目についた。

なんだ?
丸い配管にセンサーとゴムシートのようなものを貼っている。

どうやらゴムのシートが配管の熱を電気に変えているようだ。

エネルギーハーベスティングってやつか。

その電力でセンサーが動いている。
さらに測定したデータをどこかに送信している。

こっちでは人間に薄いシートを貼っているな。

何をしているかわからないが、
どうやらあれを使って体の状態を測定しているようだ。

まさか・・・

いやいや・・・

朝日ラバーのやつ
ゴムの常識を覆しているぞ。

F-TEM
(熱電発電)
ナノ電極シート

困惑していると、一人の男性が近づいてくる。

人の形をした黒い塊を見つめながら電磁波がどうとかブツブツと呟いている。

電磁波の放射を測定しているようだ。

ゴムを纏った異様な風貌をしている。

いや・・・これは俺だ。

まさか・・・

・・・

俺も、朝日ラバーなのか・・・?

俺のこのゴムのような体質は俺自身が朝日ラバーだったからなのか・・・?

その瞬間、辺りが光に包まれる

うっ、眩し・・・ぃ・・・

6:30

・・・

朝日が昇っているのに気づく。

俺はベッドの上にいた。

やはり夢だったか。

なんというか、妙にリアルな夢だったな。

そう遠くはない未来を垣間見ていたような気もする。

・・・

さて、今日もコーヒーをいれてトースト焼くか。

To Be Continued...